昔、カネに困り読書感想文の代筆を思いついた。原稿用紙1枚につき10円の原稿料という設定で、ほぼ5枚だから一人につき50円。ところが、予想以上の注文に読書量が追いつかない。そこで、適当に架空の物語をでっちあげたら、運悪く一つが入選してしまった。
「この作品は選考委員の誰もが知らない、と首をかしげているのだが?」
その生徒は担任に出典などを問い詰められてオロオロになり、すべてを白状した。むろん入選は取り消しで、双方大目玉をくらったあげく、反省文まで書かされる羽目に。職員室を出た後「反省文の代筆なら1枚20円でどうだ」と、相手に持ちかけたところ「冗談言うな!」と逆切れされた。結局、原稿料すら回収不能に。
姑息な手口で報酬を得られるほど、世の中甘くは無い。あのとき「自分には商才がないのだ」と気づくべきだった。ゴーストライター起業の破綻は、今日まで尾を引いている。
※1枚=10円の原稿料など、現代人にはタダ同然と思われるかもしれない。しかし、昭和40年代の「子ども」にとっては、「ぼったくり」にも等しい破格の金額である。