寒い真冬のある晩。
タバコが切れた。
結局我慢しきれなかった。
引き出しからあるだけの小銭を集めた。
外は猛吹雪だ。
車は出ない。
30分ほど歩いて、販売機にたどり着いた。
凍える手でジャリ銭を投入する。
白い息を切らし、ゆっくりと。
驚くべきことが起こった。
100円玉が返却口にはじき出された。
驚いたことにそれは1円玉だった。
「ウ、ウソやろ・・」
90円釣銭のはずが、10円足りない。
自分の愚かさを呪い、ぼろぼろ出た涙はすぐにツララに変わった。
販売機の前でガックリとうずくまり、しばらくは動けないでいる。
これが今の自分なら、そのまま凍死していただろう。