●山中を席巻する花崗岩
山中温泉にかかわらず、石材として極めた頻繁に目に付くのが花崗岩です。石英、長石、雲母の結晶からなる典型的な深成岩。しかし、町中をめぐっても国産素材はほとんど無い、と辻森博士は指摘します。唯一目に付いたのが、児童センター前の碑文です。ややピンクがかった御影石。これはほぼ間違いなく「万成石」よ呼ばれる岡山産の花崗岩とのことでした。
山中だけでなく、北陸一帯は火砕流や火山灰が凝結した凝灰岩が多く産出されます。あの大岩さんも、凝灰岩の露頭であり、滝ヶ原石は全国的にも有名です。そういえば、古くは石碑や墓石もこの石材が普通でした。
しかし、日本人向きの高級志向にピッタリだったのが花崗岩でした。やがて、日本が豊かになるに従い、凝灰岩は次々硬く美しい花崗岩にとって変わられます。しかし、国産のものはやがて品薄になり、中国を中心とする外国産が大量に輸入されるようになりました。高利益を求め、なだれを打って原材料を海外に求めたのは、なにも漆器だけではなかったのです。
山中町の町章を刻む国産花崗岩の碑は、ある意味「町の化石」というべきかもしれません。