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2008年 10月 27日
オレは食材ハンターだ。日本各地でを巡って、珍味を捜し回り、高値で問屋に売りさばく、グルメブーム時代のベンチャービジネスだ。今回は北陸のひなびた山奥に足を向けた。そこは自然食品の宝庫だ。オーガニックだの地産地消だの、特に輸入食材や事故米などの不祥事が続く中、この手の食材は暴騰している。廃村間近のO村は山菜など採り放題だ。それじゃ山菜泥棒だろ? って。人聞きの悪いこと言うなよ。今の世の中、それぐらいしなくちゃ、生きていけないだろ。だいたい、日本の政治家やエリート官僚なんて皆詐欺師じゃないか。
栗に芋に柿、それに天日干しの米。みんな持ち帰りだよ。と、村に着くと、民家の玄関先で芋の皮を剥いている婆さんに出会った。なんだ、人がいるのか・・ くそっ! ついてない。 「どうなさった? こんな田舎にどんな御用か?」 「あ、ここの湧水が体に良いと評判を聞き、汲みにきたんだ。家内が病気がちなもので」 「それはそれは。湧水はこの坂を登ってすぐじゃ。よかったら婆の一輪車を使ってくれ」 こんな婆さんを騙すなどワケはない。ありがとよ、と言いながらペットボトルを片手に婆さんの指差す方角へ歩いていく。湧水をペットボトルに注ぎながら、棚田や畑のレイアウトを頭に叩き込み、帰りに婆さんの姿がなければ、作物を根こそぎ持って帰るとしよう。 坂を下りたら、まだ婆さんは芋の皮を剥いていた。これじゃ日が沈むまでかかるだろう。残念ながら出直すか・・と思ってふと車のワイパーにナイロン袋がはさんであることに気づいた。 「なんだ、これは?」 「茗荷の酢漬けじゃ。あんた、嫁さんが胃腸病みだと言ったろ? これを食べさせてやんなさい。体が良くなる。気の病なら、それもよくなる。朝昼晩、食事のたびにひとつずつ。無くなったらまたこの田舎に来ればよい」 このクソババァ! とオレは思わず叫びそうになった。俺はあんたらが手塩にかけて育てた農作物をかっさらいにきた盗人なんだ。風俗上がり嫁さんなど、ボコボコにした翌日出て行きやがり、一緒に行ったガキはムショ暮らしだ。そんなことぐらいピンとこんのか・・ しかし、オレは「ありがとう・・・」と蚊の泣くような声でいうのが精一杯だった。 車のドアを開けると「ようこそ、こんな遠い、遠い田舎まできてくれた。峠の向こうは道が狭く、車でも難儀する。気をつけて帰れ。そして、いつでも来てくれ」と婆さんは言った。 バックミラーを見ると、オレの姿が見えなくなるまで、婆さんは芋を剥く手を止め、立ち止まってオレを見送っている。やめろ。オレを見送るな。村を出、婆さんの姿が見えなくなったときオレは「うあああああ!」と車の中で叫んだ。オレはこれから町に向かう。「振り込め詐欺に引っかかりそうな年寄りがいたら紹介してくれ。四分六でどうだ」この婆さんなら、まちがいなくカネになるだろう。そんな詐欺師の蠢く町へ戻る。でも、もうこの村へはこない。そう思いながら酢漬けの茗荷をつまんだ。酢が利いていてすっぱい。眼から涙が出たのはそのせいだろうか。
by binbokuji
| 2008-10-27 03:06
| Editorial
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